がんじがらめ







自己嫌悪と幸福感という、全く別の感情が混ぜ合わさったような気持ちで目が覚めた。何時だろう。窓の外はまだ暗い。寝返りをうつと見なれた顔が暗闇の中でもはっきり見えた。寝返りといっても小さな動きだったはずだ、と開かれた彼の瞳にそう思う。

「起こしました?」

小さな声で問いかけると同じように小さな声で「たまたま目が覚めたんだ」と返ってくる。その答えに返事を囁いて布団を顎まで引き上げた。ひんやりとしたシーツの感触が気持ちよくて何となく足を動かす。落ち着きがないと言わんばかりの視線を投げかけられたが。

「夢を見たんです」

静寂と夜との逢瀬を邪魔しないようにできるだけ小さく呟くように話しかけてみる。どんな、と雲雀さんは言って、それに嬉しくなる。話をしてくれる気があるみたいだ。

「雲雀さんと旅に出る夢です」
「旅?」
「追っ手から逃げながら、二人で世界を回るんです」
「追っ手?」
「雲雀さんを追いかけてる人たちみたいです」
「なぜ僕が追われてるんだ」
「夢ですから気にしないんです!それで追われてるのに楽しいんです。家族が心配してるかもしれないのにそんなのいいやって夢の中のハルは思ってるんです」
「ひどいね」
「はい。だから目が覚めて自己嫌悪に陥りました。……でも」

何。
視線だけで雲雀さんが尋ねてくる。

「ずっと夢を見ていられたら、とも思ったんです」

すごく幸せだったんです。ただただ二人で旅をする。もちろん家族だって大切で、夢が現実になればいいのにとは思わない。けれどもっと夢の中にいたいとは思った。

「ハルは雲雀さんがとても大切みたいです」

瞼は重たい、でも眠たいとは感じない。寝たいのか寝たくないのか自分でもよく分からないと小さな声でそう告げる。
返ってきたのはバカじゃないの、というなんとも素っ気ない言葉だったけれど、それと共に温もりに包まれたから良しとしようじゃないか。






く、くはっ…!
二人の互いに対する想いが溢れたお話に、思わず悶えてしまいました!!
二人の逃避行の行く末…ハルちゃんの夢の中を覗いてしまいたいと思った私は駄目人間でしょうか。
柚木琴羽様、どうも有難う御座いました!!







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