如何に久しきものとかはしる













ぐったりと疲れ切り帰宅したハルを迎えたのは、超絶不機嫌な表情を浮かべた王子様だった。
「あの…」
突然放り出されたベッドの上。
白いシーツを背にハルは、覆い被さる様にして覗き込んで来る顔に話しかける。
「ん」
「ハルは今仕事から帰ったばかりなんですが…」
「だから?」
「せめてゆっくりしたいなーって…思ったりなんか、して…」
引きつり気味の笑い顔に、ズイと時計が突きつけられる。
「ハール。これ、何時示してる?」
にーっこりと笑った王子の顔は、とてもとても禍々しい色に満ちていた。
「え…と、夜の9時に見えます」
「せーいかい。んじゃ、もいっこ質問ね。オレとの約束は何時だったかなー?」
「た、確か…夕方6時、だった…かと」
「またまた正解〜。さて此処で簡単な計算。9引く6は?」
「………3、です…」
「ピンポーン!さっすがハル。良く解ってるじゃん?」
「あは、は……はひっ!?」
突如、王子ことベルフェゴールの腕が、盛大な音と共にシーツに勢い良く叩き付けられる。
ビクリと身を竦ませるハルを覗き込んだまま、口元だけの笑みを浮かべてしししっと笑い声を立てた。
「3時間の遅刻の言い訳は?」
「その…あの、仕事が終わらなくて…。だからえっと、御免なさい」
「ん、素直なのは良いんだけど。王子を3時間も待たせた罪は重いって解ってる?」
ハルの両脚を割って、ベルフェゴールの右膝がスルリとシーツに沈む。
「あ、あの…ベルさん…」
内股に擦れる生地の感触に、ハルの肩がピクリと動く。
「罪にはそれ相応の罰があるのも、賢いハルはトーゼン知ってるよな?」
沈んだ膝が上方へと移動し、それに伴いハルのスカートが捲れて太腿が露になる。
篭っていた体温が途端に空気中に溶け出して行った。
「はひっ、ちょ、待っ…!!」
「待たない。王子が此処まで我慢したんだし、これ以上は無理」
自分の胸に制止の為に置かれた両腕を取り、ベルフェゴールは体重を掛けてハルの動きを封じて行く。
尚も何かを言い募ろうとする唇を無理矢理に塞ぎ、口腔内へと舌を送り込むとハルの力が抜けていくのが解った。
「ん、ん…ぅ」
ピチャリと粘膜を擦れ合わせる音を立て、ベルフェゴールの舌が深く潜り込んで行く。
「は、ぁう…」
抵抗の無くなったのを見計らい、片手を外すとハルの太腿を軽く撫でる。
軽く撫でただけだと言うのに、ビクリと確かな反応が返って来る。
合わさった唇から僅かに漏れる声に、ベルフェゴールの腹の底で何かがザワリと蠢き出す。
「イイ顔。でも、今日は罰ゲームだからそう簡単には気持ち良くさせてやんない」
糸を引いて離れた舌を目で追い掛け、ハルは身を起こしたベルフェゴールをぼんやりと眺めた。
ベッドの上で四肢を無防備に曝け出すその姿に、ベルフェゴールの喉が軽く鳴った。
自分の要求を告げた時、ハルはどんな顔をするのだろうか。
すぐにでも見てみたい気持ちを抑え、わざとゆっくりと両手を動かす。
己のベルトを外し、前を寛げると既に雄の片鱗を覗かせている物が視界に入った。
「ハル。起きて」
片手でハルの上半身を引っ張り起こすと、その顔をグイと下肢へと近付けさせる。
「…!?」
其処で漸く我に返ったハルが、目を見開いて此方を見上げて来た。
「王子の命令。ホラ早くして」
有無を言わせない口調で更に頭を押さえつけると、くぐもった呻き声の様なものがハルの口から漏れる。
ベルフェゴールはベッドに胡坐を掻いた状態で座り、押さえ付けていた手を離す。
ハルは途方に暮れた顔で視線を落としていたが、やがてキッと顔を上げると両手を伸ばした。
柔らかな掌の感触に、半ば勃ち上がっていたものが一気に硬度を増す。
その硬さにハルがビクリと怯える。
もう何度も身の内に入れた物だというのに、未だに慣れてくれない恋人のそんな様子に思わず笑いが漏れた。
そして、そういえばこの行為は初めてだったと思い出す。
決意の秘められた顔で、ハルはやわやわとベルフェゴール自身をゆっくりと上下に抜き出した。
「ハル?ちゃんと口も使って」
「はひ…っ。ベルさん、意地悪が過ぎませんかっ?」
「罰だって言ったっしょ?」
「ぐ…」
付け足された条件に、ハルは悔しそうに口をグッと閉じる。
しかしそれは直ぐに開かれ、ゆっくりと熱源へと近づけて行く。
唇に当たる熱さに一瞬だけ動きが止まり、そろりと舌を出すとそのまま口の中へと含む。
ヌラリとした感触に、ベルフェゴールの口元が僅かに開いて息を漏らした。
経験も知識も無いハルはといえば、どうして良いのか解らず、ただ歯を立てない様に注意して首を動かすしか出来ない。
「そのまま深く咥えて、舌だけ動かしてみ?」
「ん、ん…ぅむりっ」
「無理じゃなくて、やってみなって。じゃないとオレが好き勝手に動いて喉犯すよ?それでもいーんなら、そーするけど」
「―――っ」
ベルフェゴールの言葉に、慌てて深く身を屈み込ませる。
喉奥を突くぐらいまで咥え込み、想像以上の苦しさに、ハルの目尻にジワリと涙が浮かぶ。
こんな状態では、とてもではないが舌等動かせるはずもなく…。
「…ま、こんなもんか」
喉がヒクリと震える度に、興奮してくる己自身を宥め、ベルフェゴールは軽く舌なめずりをした。
ハルの顎を指先で捉えて上向きにさせ、口の中から自身を抜き取る。
ズルリと生々しい音がハルの耳に届き、火照った頬に更に朱色が増した。
「仕方ねーから、王子が手本見せるからさ。ちゃんと覚えとけよー?」
言うなり、ハルの両脚を掴んで大きく開かせる。
「はひっ!?やっ、ベルさん待っ…!!」
ハルの手が慌ててタイトスカートを押さえ様とするも、ベルフェゴールの動きの方が早く、気付けばホックを外されて足から抜き取られてしまっていた。
「やらしいカッコ。此処、濡れてんの自分で解ってる?」
ベルフェゴールの指先が、ハルのショーツの上を擽る様に押さえる。
「う、嘘です…」
ぐにぐにと指を押し付けられて初めて、ハルは自分の下肢がしっとりと湿り気を帯びている事に気付いた。
「オレの咥えてこーなっちゃったんだ?」
「ちが…っ」
「ちがわないっしょ。こんなグチョグチョにしてさ。そんなに待ち遠しかったんだ?最近全然してねーし、ハルもたまってんだ?」
「……っ」
ベルフェゴールの言葉に、ハルの顔が一気に温度を上げる。
そんな表情に、ベルフェゴールはししっと小さく笑った。
押し付けていた指先に力を込め、そのままズブリと秘所の入り口まで潜り込ませる。
「ひぅっ」
明らかなシルク製布の感触に、微かな痛みがハルを襲った。
それと同時に感じた、ゾクリと背筋が粟立つ快感。
まさかこんな行為に感じてしまったとでも言うのだろうか。
その事実を認めたくなく、ハルはいやいやをする様に首を左右に振った。
「すげ…中トロトロじゃん。ハルのやらしー身体、ますます敏感になってんじゃね?」
「…ん、っ…ゃ」
ショーツを纏った指先が円を描く様に、ハルの秘所の浅い部分で暴れている。
その度に漏れそうになる声を噛み殺し、身体を侵食して行く欲求を必死の思いで耐える。
ビクビクと震える内股を、ベルフェゴールは暫くの間面白そうに眺めていたが、突然指先を抜き取ると蜜壷にビッショリと張り付いたショーツを手早く脱がした。
「え…ベルさ、ん?」
「手本見せるって言ったっしょ」
「手本…って、きゃっ!」
ベルフェゴールがハルの内股奥へと顔を寄せたかと思うと、先程まであてがわれていた指先とは違う、明らかに濡れた何かが、秘所上部にある敏感な尖りを弄り始めた。
最初はゆっくりと、しかし徐々にスピードを増して行く舌先で転がされ、ハルはもう声を抑える事は出来なかった。
「ひゃ、…あぁうっ。や、嫌…ぁっ」
時折悪戯めかした様に吸い上げられ、一気に限界まで高まった身体は、快感の開放を求めて大きく跳ねる。
ビクン、ビクンと何度も大きく揺れた両脚に、ベルフェゴールはやっと顔を上げた。
「もーイっちゃった?早くね?」
「だ…って、こんなの…ぅ」
快感が過ぎた為か、ハルの目からボロリと涙が零れ落ちた。
「まったくさー。手本だって言ってんのに、先にイっちゃうしなー。どーしよっか、ハル?」
それでもベルフェゴールの攻撃は止む事無く、言葉で更にハルを追い詰めて行く。
「…、ベル…さ」
「ん」
涙の跡が残る顔をベルフェゴールに向け、視線だけでハルは懇願した。
一度達したというのに…いや、だからこそなのか、身体が熱く疼いて仕方が無い。
早くこの熱から開放して欲しかった。
何時もなら此処で直ぐに抱いてくれるベルフェゴールは、しかし今日はそう簡単には許してくれない。
「ちゃんと言葉にして言わないとダーメ。あげない」
唇の周りに付着したハルの愛液を舐め取り、ベルフェゴールは音を立てて笑う。
「…っ。……、ベル、さんのが…欲しいです」
「何処に?」
「う…、ハルの此処に、…下さいっ」
ハルの手が自分の秘所へと伸び、入り口を軽く掻き乱す。
それだけで、粘度の濃い愛液がトロリとシーツに垂れてしまう。
「ハル、今日は素直じゃん。そんなに欲しいんだ?」
両手をハルの頭の真横に置き、切なそうな表情で見上げて来る顔を覗き込む。
小さく頷かれた顔に、ベルフェゴールはそっと触れるだけのキスをした。
真っ直ぐ上を向いている自身を軽く抜き、開かれた足の間へ身体を潜り込ませると、そのまま秘所へと押し当てる。
クプンと濡れた音を立てて、ハルの秘所は簡単にベルフェゴールを呑み込んで行く。
「んぁあっ」
滑りを帯びた質量が最奥を突いた瞬間、ハルの身体が再び大きく震える。
「はやっ。…ハル、感じ過ぎじゃね?」
「ん…ぁ」
「ま、いっか」
二度目の絶頂にくたりとシーツに横たわる肢体を持ち上げ、ベルフェゴールは軽く身体を揺さぶった。
それだけできゅんと締まる膣内に気を良くし、今度は自分の快感を追い求めて行く。
「服着たままってのも、結構そそられるよな」
「ぁ、やっ…そ、なこと…ぁ、あっあ、んっ」
何度も最奥を突き上げては入り口まで戻し、弾力のあるハルの内側を探る。
何度も擦り上げた為か、ハルの透明だった愛液は空気が混じって白く濁り、次々とシーツに染み込んで行った。
「きゃ、うぅっ…ベ、る…さっ…ぁあっ、はげしっ…!」
「…ん、っ…まだ、イっちゃ駄目、だぜ?」
ジュプジュプと音を立て、猛り狂った様に熱いベルフェゴール自身は、執拗にハルの膣内を犯す。
「んあ、あぁっ。ゃっ、も…む、り…んぁ、あんっ」
「もー少し…っ」
ベルフェゴールは律動を繰り返しながら、チラリと横目で壁に掛かった時計を見遣る。
後、30秒。
「ぃ、あっ…あ、あ、あっ…ゃあっ、イっちゃい、そう…もっ」
何度も強く締め付けられ、既にベルフェゴール自身も限界が近い。
後、10秒。
ハルの両手を自分の背中に回させ、ラストスパートとばかりに勢い良く腰をぶつける。
「ぁあっ、あっ、ひ、っぁああ」
「いーよ…イけ?」
ズプンと打ち付けた腰の音を合図としたかの様に、時計が突如として音楽を鳴らし始めた。
日が変わった証の音楽。
ベルフェゴールが設定しておいた、大晦日と正月の境目の時間を、この曲は示していた。
「ゃ、ぁああっ」
「……っく、…」
一際きつく締まった膣内が、ハルの三度目の絶頂をベルフェゴール自身に教える。
それに呼応して、ベルフェゴールもまた己を解放していた。
ドクン、ドクンと何度も射精を繰り返し、膣内へと精液を降り注がせる。
「ん、あ…ぁ、ぁ…」
熱い飛沫を受け止め、それにすら感じているのかハルの目がトロンとぼやけてベルフェゴールを捉える。
最後までしっかりとハルの身の内へと送り込むと、ベルフェゴールはハルと深いキスを交わす。
「ハル、あけましておめでとー…で合ってるんだよな?日本では」
「は、ひ…。あけましておめでとう…ござ、います…」
未だに整わない息で、ハルはゆっくりと頷く。
「ししっ。んじゃ、これも合ってるよな。こーいうの、姫初めって言うんだろ?」
「はぇ?」
「正月早々のセックスの事」
「!」
ベルフェゴールの言葉に、ハルは真っ赤な顔で硬直した。
「よ…っと」
繋がったままだった肢体を離すと途端に、奥まで溜まっていた白濁液が秘所の入り口から溢れ出て来る。
その感触にすらゾクと肌が震え、ハルは情けない表情で時計を見遣った。
0時2分。
窓の外では、年始の言葉が大声で飛び交っている。
年の変わりを告げるこの時間帯、寝ている人はどうやら少ない様だ。
「ぅう…ベルさんの馬鹿っ」
ハルは羞恥に染まった顔を隠す為、ベッドに横になったベルフェゴールの胸へと額を押し付ける。
「でも気持ち良かったっしょ。王子頑張ったしー?」
「はひー…っ」
頭の上から降ってくる笑い声に、ハルは最早何と答えて良いのか解らず、ただただ苛めている張本人の胸へと避難するしかなかった。







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