白蘭先生の授業風景5
ハル「こ、此処まで逃げてくれば…だい、大丈夫…でしょう、かっ」
スパ「そんなにゼーゼー言うなら、喋らなきゃ良いのに」
ハル「はひっ。…なんで、スパナさんは…、そんな元気なんで、すか」
スパ「ん。ウチはモスカの体内で鍛えられてるから」
ハル「…?」
スパ「ウチの造ってるロボット。あれで最高速度の研究とかしてたら、自然と鍛えられるんだ。移動速度が速ければ速い程、重力も摩擦も桁違いに負荷が掛かるし。何時もそれ乗り回してたら、色々とね。…ま、今ではその負荷も相当軽減出来る造りにしたけど」
ハル「そ、んなものなんですか?」
スパ「うん。…それより、さっきのアンタの知り合いなんじゃないの」
ハル「は、はぁ。知り合いというかハルの大切なお仲間さんなのですが…。はひ。やっと呼吸が整ってきました」
スパ「それなら、どうして逃げる必要が?」
ハル「え、えーと…。何か掴まったら怖い事をされそうだったので、つい…」
スパ「仲間なのに?」
ハル「はひ…。その筈なんですが」
スパ「?…まぁ、ウチは関係ないから別に良いけど」
ハル「はひっ!ど、何処へ行かれるんですか?」
スパ「そろそろモスカの調整に戻る。落ち着かなくなってきた…限界」
ハル「だ、だだ駄目ですー!ストップ、スパナさん!!」
スパ「…怖いから、抱きつくのは止めて」
ハル「怖いのはこっちです!今は一人にしないで下さいぃぃ」
スパ「いや、怖いのは間違いなくアンタ自身だ。…あれ、何だっけ。日本の諺で言う――あぁ、火事場の馬鹿力か。アンタそれ発揮し過ぎだから」
ハル「そ、それじゃ、絞め殺されたく無かったら、ハルも一緒に連れてって下さい!」
スパ「………。それ、脅迫?」
ハル「脅迫です」
スパ「いた、いた、痛…解った。解ったから、一回離して」
ハル「そう言って離した瞬間、逃げたりしませんか?」
スパ「相当疑心暗鬼になってるな。…逃げないから」
ハル「解りました。…でも、もし逃げたら、今度は絶対に離しませんからね?良いですね?」
スパ「それ、ウチじゃなくて白蘭に言ってやれば良い。絞め殺されるのを希望してるみたいだから」
白蘭「ちょっと違うね。絞め殺されるのを希望してるんじゃなく、抱きつかれるのを希望してるんだよ」
スパ「あ、噂をすれば何とやら」
ハル「す、すすす簀巻きの人!」
白蘭「こんな所まで来てたんだ?随分探しちゃったよ。知らない内に、何かお客さんも増えてるみたいだし…。早く部屋に戻ろうか、ハル?」
ハル「嫌です!第一、ハルの部屋はあそこじゃなく、ボンゴレ学園の中ですし!!」
白蘭「嫌だなぁ、何言ってんの。ハルはもうミルフィオーレ学園の生徒になったんだよ?部屋もちゃんと新しく用意してあげたでしょ」
ハル「か、勝手過ぎです!ハルはそんなの一度も了承した覚えはありませんし……って、スパナさん何逃げようとしてるんですか!」
スパ「あ、バレた」
ハル「逃げないって約束したばかりでしょう!」
スパ「いたたた、御免。謝るから離して」
ハル「嫌です。この状況でスパナさんに居なくなられてしまうと、ハルは再び簀巻き人生一直線ですから」
白蘭「スパナ君ばかりズルイなぁ。何で会ったばかりの君がそんなに懐かれて、僕には懐いて貰えないんだろうね?」
スパ「その対応のせいだと思うけど。…ん、そういえば正一は?」
白蘭「あぁ。正チャンなら、爆破された門を見に行ったよ」
スパ「成る程…さっきのか」
白蘭「うん。恐らくボンゴレ学園の連中だろうけど。それじゃ、ハル。そろそろ行こうか。彼等に見つかったら、色々と面倒そうだし」
ハル「この簀巻きの人と、ヒバリさんとベルさんと、どちらに掴まるのが怖いでしょうか…」
スパ「ウチに聞かれても。追われてるのはアンタであって、ウチじゃないし。取り敢えず離す気は…」
ハル「ありません。こうなれば一蓮托生、運命共同体です!ラストまでスパナさんも道連れです!!」
スパ「嫌過ぎる…。ウチはモスカの調整を…」
白蘭「仕方ないね。それじゃ、スパナ君も一緒においで」
ハル「はひっ、白蘭さん!襟首掴まないで下さいーっ」
スパ「そういうアンタも腰に抱きつかないで…。せめて腕にして欲しい」
白蘭「はいはい、文句なら後でね。行くよー」
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