今日をかぎりの命ともがな3







抵抗する度に、鎖が床と擦れ合って耳障りな音を立てる。
「いーかげん大人しくしたら?どんだけ暴れても、結局は無駄なんだからさぁ」
頬を指先で擽られ、ハルは身を捩って顔を背けた。
「それとも、無理矢理されんのが良いの?」
それが不満だったらしく、青年の指先が胸の先端へと伸びる。
引き千切られる様にして剥ぎ取られた下着は、既に床の上へと投げ出されている。
露にされた膨らみは、先程からの刺激を受けて紅く色付き始めていた。
そんな己の身体が疎ましく、ハルは悔しそうに歯を食い縛る。
「ま、それも悪くねーけど。どこまで耐えられんのか、見物だよなー」
青年はピンと立った胸の先端を口に含み、態と厭らしい音を立ててしゃぶり始める。
その度にハルの身体は揺れ動き、ジンとした熱が徐々に身体を支配していくのを感じていた。
今まで一度もこんな行為をした事がない身体は、慣れていない分、容易く快楽に負けそうになる。
「いや…ぁっ」
ショーツが熱を帯びる濡れた感触に気付き、ハルは必死で意識を逸らそうと首を振る。
しかしそれは逆に、今されている行為を更に煽る結果となっただけだった。
舌先で尖りを捏ね繰り回され、反対の乳房を手の平で揉みしだかれる。
下肢の付け根の中心が、酷く熱い。
トロトロと溢れ出す蜜が、ショーツを肌へと貼り付けていた。
「すっげ…」
胸から顔を上げた青年が、スカートから覗き見える下着を見て、軽く舌なめずりをする。
しししっと低く笑う声が、不思議とハルの身体に熱を加えた。
「ぐちょぐちょ。もうこんなになってんだ?エロい身体してるよなぁ、ハル。もうオレが欲しくてたまんねーんじゃね?」
秘部が半透明の液にしとどに濡れて、下着の上からでもうっすらと見える。
陰核を指先で軽く弾くと、ハルの身体が飛び跳ねた。
「あぅっ」
明らかな嬌声に、青年の目が細められる。
「オレが欲しいって言えよ」
甘い誘惑の声に、それでもハルは頭を振る。
此処で負けてはならない。
雲雀の顔が脳裏に浮かび、その事に励まされハルは抵抗し続ける。
「そんなに、あいつが好き?」
まるでハルの考えを読み取ったかの如く、青年が陰核を強く抓った。
「ひあ、ぁっ」
過ぎた快楽が痛みを伴って、ハルを一気に絶頂へと押し上げる。
「あ、イっちゃった?」
ビクビクと痙攣した身体を見下ろし、青年が嬉しそうに哂う。
その声には何処か優越感が混じっていたが、今のハルはその事に気付く余裕はない。
人生初の快感に、怯えと不安と罪悪感が一気に襲ってきたせいだ。
「ぅ…」
堪え切れなかった事実に、ハルは涙を零す。
雲雀に申し訳が立たない。
彼以外の手で踊らされている自分が、酷く惨めだった。
ボロボロとハルの両目から溢れ出てくる涙を見つめ、青年は苛立たしげにそれらを全て舐めとった。
「もういいや。あいつの事なんて思い出せない様にしてやるよ」
ハルの涙の理由に気付くと小さく舌打ちし、青年は少女の小柄な身体を下敷きに覆い被さる。
「やっ…もう嫌ですっ!」
精一杯の力で押し退け様としてくるハルの両手を片手で押えつけ、空いた方の手でショーツを脱がしにかかる。
それに気付いたハルは、意地でもさせまいと足を滅茶苦茶に暴れさせた。
しかし下肢の間に青年を挟み込んだ状態では阻止も難しく、逆に暴れたせいで彼の手助けしてしまう結果となった。
スカートは大きく捲れ上がり、片足にショーツを纏いつかせただけの、あられもない姿になったハルを見下ろし、青年はゆっくりと指を入り口に差し込んだ。
壁を開く様に二本の指先がヌルリと侵入すると、スポットを探る様に丁寧に動いていく。
その異物感にハルの眉間に皺が寄る。
自然と身体も強張り、指をきつく締め付けた。
「うっわ…キツキツ。こんなんで、オレの入るかなぁ」
その口調が嬉しそうに聞こえたのは、ハルの気のせいだったのだろうか。
指先に粘液を纏い付かせ、2本の指は少しずつ奥を目指して進んで行く。
「い、た…っ」
「こんなんで痛いなんて言ってちゃ、オレの入んないよ?」
「おねが…やめ、て」
もう何度言われたか解らない懇願の台詞を、青年は今度もやはり無視を決め込んだ。
くちくちと音を立てて、愛液を増やす様にハルの敏感な箇所を探す。
やがて一部ザラついた箇所に指先が当たると、ハルの目が見開かれた。
目当ての場所を探り当てた青年は、ニィと歯を見せて笑うと其処を執拗に擦り上げた。
「―――っ!」
再び痙攣がハルの身体を襲う。
ぎゅうと指を軽く締め付ける感触は、絶頂に達した証だ。
「感じやすい身体してんな。指がべっとべと」
一旦秘所から抜くと、糸を引く指先をハルの目の前に持っていく。
ヌラリと光る粘液が視界に入り、羞恥に顔を染めてハルは目を逸らした。
「そんなの、見せないで下さいっ」
「何言ってんだよ。自分のじゃん?」
青年は指先に付いた愛液を口に含み、ペロリと舐め上げた。
その光景にハルは一層頬を染め、青年を視界から追い出すように目を固く閉じる。
「…そーいう態度なワケ。そんじゃ、オレも遠慮しないで良いよね」
不穏な声と共に、ジッパーを下ろす音が聞こえ、熱い何かが秘所に押し当てられる。
焼けた鉄の塊を連想させられる恐怖に、ハルは悲鳴を上げまいと口も閉じた。

怖い。
今から自分の身に何が起きようとしているのか、本当の意味では解らないから尚更だ。
知識はあっても、経験がないという事はこんなにも恐怖を煽るものなのだろうか。
ハルは身体を震わせて、ただただ雲雀の顔だけを思い描こうと集中した。
そうでもしなければ、みっとも無く泣き出してしまいそうだったから。
それはきっと、この青年を喜ばせてやるだけだろう。
それだけは嫌だった。
身体の震えが鎖にも伝わり、小刻みな音を立て続ける。
「ヒバリさん…ヒバリさん」
小さく、何度も、愛しい恋人の名を呼ぶ。
目を閉じたまま、雲雀の事だけを思い浮かべて。
だからハルは気付かなかった。
青年の顔が微妙に変化した事に。
何処か辛そうな、痛みを堪える様な表情を浮かべた事に。

「ハル」
無機質で冷たい声音が、ハルの耳に飛び込んできた瞬間。
ハルの身体は、熱の塊に挿し貫かれた。
「―――――!!」
絶叫すら出ない程の痛み。
それがハルの秘所から全身を一気に駆け抜けた。
ぶつっ、と体内で何かが破れる音が聞こえた気がする。
「…っ、キツ」
ギチリ、と膣内が音を立てて青年自身を締め上げる。
「ぁ…」
抜こうにも抜けないぐらい、ぎっちりと異物を銜え込んでしまった身体に、ハルは呼吸すら侭ならない状態で震えている。
青年はそんなハルの顔を自分へと向けると、その唇に深く口付けた。
今度は何の抵抗もなく、舌が少女の口内へと潜り込んで行く。
チュル、と舌を絡めて滴る唾液を送り込むと、喉の奥に溜まったそれにハルはむせた。
ゲホゲホと吐き出される息に、自然とハルの口は呼吸を繰り返す。
「息しとかないと、保たねーよ?」
しししと笑うと、青年はハルの前髪を梳いてやった。
彼が先程一瞬だけ浮かべた表情は、もう何処にも無い。
あるのは、征服する喜びに満ちた笑みで彩られた顔だけ。
苦痛ばかり齎す相手を涙目で見上げ、ハルはゼェと喉を鳴らした。
呼吸をした事によって、僅かではあるが身体を動かせる様になるなり、青年は更に深く身を沈めていく。
「ひっ…」
途端に、新たな痛みがハルを苛んだ。
恐らく秘所の何処かが裂けてしまっているのだろう。
ゆっくりとした動きですら、耐え難い痛みが襲い来る。
「ぁ、う…」
子供の様にいやいやと頭を振り、青年に声無き懇願をする。
これ以上の痛みには、とてもではないが耐えられそうもない。

お願いだから、もうこれ以上動かないで。

「止めて欲しいんだ?」
そんなハルの願いは正確に伝わったらしく、青年の声が甘い響きを伴って耳に飛び込む。
ハルは必死に何度も頷いた。
「だーめ。此処まで来たら、最後までやんねーと。じゃねーとあいつの事、何時まで経っても忘れられねーだろ?」
その言葉は、ハルを一気に奈落の底へと叩き落した。
先程までハッキリと思い浮かべられていた雲雀の姿が、ぼやけた姿でどんどんと小さくなっていく。
もう雲雀とは会えない。
その事実が、痛みを伴ってハルの身体を蝕んでいった。







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